かかとをあげた姿勢(爪先立ち)をさせるのが好きだ。
まずぱっと見に美しい。
脚が細く長く見える効果がある。
ハイヒールが世紀を超えて支持されるわけだ。
かつては路上の汚物で服の裾を汚さぬように履いたと言われるハイヒール。
現代でも履かれているのは美しいと感じるからだろう。
しかし、かかと上げの姿勢が美しいのは、足が長く見えるからだけではない。
もっと想像を掻き立てる美が潜んでいる。
かかとを上げた姿勢や、片足立ちした姿勢は、極めて不安定だ。
ふともも、ふくらはぎに力が入り、体勢を保つために全身に緊張感がみなぎる。
小刻みに震え、押せばたやすく倒れてしまう。
モノの形状について考えてみよう。
杯も花瓶も、横から見るとなぜ不安定な逆三角形なのか。
安定感からしたら、下ががっちりと安定する台形や、マグカップのようなずんどう形が望ましいだろう。
でもそれは美しくない。
倒れそうだからいいのである。
不安定に心がざわつく。
「置いてはいけない」と感じ、つい手にとりたくなる。
それが杯の形に秘められた魔力だ。
素材についても同じだ。
何をしても壊れないゴムの器なんて、美しくも何ともない。
触れるだけでパリンと砕けそうな、薄いガラスで作られた器こそ美しい。
崩壊の時を、前倒しで思わせる。
壊れそうなものほど、想像を掻き立て、セクシーなのだ。
人間に話を戻そう。
かかと上げに耐えきれずに、よろめく。
鞭の連打で崩れ落ちる。
刻一刻と近づく崩壊の瞬間まで、体を震わせながら耐えるM女。
この美しさは、SMでしか味わえない特級品だ。
そんな話を奴隷とする。
「ごしゅじんさま、へんたいですねー。」
「でも、君も限界まで我慢させられるの好きでしょ。」
「うー」
奴隷の喜びがご主人様の喜びと重なる。
M女とは互恵的な関係でありたいものだ。
さあ、今日もいっぱい壊れようね。
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